今回の3回目は『安楽性の追求』と『Design for All』を考えてみたいと思います。

イージーチェアの目的で最も重視されているポイントは、『安楽性の追求』です。
椅子の文化が発達している国々では、椅子の上で長時間生活し、身体を預けることで安楽性を確保していますが、日本では、床や畳の文化が発達したことにより安楽性の考えが違います。
上の写真は、ボーエ・モーエンセンが1958年にデザインした『テレビソファ』と言われる作品で、従来の安楽椅子の定義から解放された究極のイージーチェアです。
この椅子の特徴は、床の上にもう一つの床を作り出し、靴を脱いで座ります。それは、まさしく畳の上を床として生活している東洋の文化を参考に、モーエンセンが新しい安楽性を追求した作品です。

上は、子供達が『テレビソファ』の上ではしゃいでいる写真です。
皆、靴を脱ぎ捨てて椅子に座る様子は、西洋の文化にとって珍しい光景と言えます。
そして最後は『Design for All』をお伝えしたいと思います。
福祉の先進国であるデンマークでは1959年にノーマライゼーションという法律が制定され、「社会で日々を過ごす一人の人間として、障害者の生活状態が、障害のない人の生活状態と同じであることは、障害者の権利である。」ということが重要視されています。
その活動として先進国では『ユニバーサルデザイン』が定着し、デンマークでは『Design for All』(すべての人のためのデザイン)と言う理念のもと、生活に根ざした美しいデザインが生まれています。
それは、今世紀においても最も重要視されるデザイン活動の一つであり、環境への配慮もその一部に含まれています。

上の右側の椅子は、ハンス・ウェグナーが1970年代にデザインしたユニバーサルデザインの椅子です。
この椅子のポイントは、起立、着座がしやすいよう握りやすい大きな肘と、身体を預けながらくつろげる適度な大きさのシートです。そしてクッション材にはスプリングを使い、どこに座っても適度な耐圧が得られるように工夫されています。一見地味な椅子ですが、形以外に椅子の座る感覚までデザインしたウェグナーの秀作だと思います。
そして、その左側は、フレミング・ビッツが考案した『マルチ5』という椅子です。
この椅子は、北欧デザインの流れの中で、さまざまな状況に対応きるユニバーサルデザインをさらに進化させた補助機能付きの椅子です。
この椅子の特徴は、起立、着座の補助や、リクライニングとなどの機能を内蔵モーターにより補い、体に障害があり、日中に座る時間の多い方や、寝たきりを防止するために椅子に座りながらリクライニングを可能にしたことです。

起立、着座を補助する昇降機能。

フット+リクライニング機能。
高齢の方や身体の不自由な方が、椅子の生活をすることにより、できるだけ健康を維持していただく事を目的しています。
また、日本でも2004年にグッドデザイン・ロングライフデザイン賞に輝いています。
詳しい『マルチ5』の紹介
私達は、さまざまなお客様の趣味、思考を形に置き換える作業をしています。
しかし、それは、お客様の意見や個人的な考えを形にしているのではありません。
私達は、常に『Design for All』(すべての人のためのデザイン)を通して創作活動をしています。
1回目の『伝統と椅子張り』はこちらから。
2回目の『木の加工と造形美』と『椅子製作の分業化』はこちらから。
展示会 「暮らしの中の心地よい椅子」展
北欧のイージーチェアの世界
期 間 2009年6月19日(金) 〜 7月12日(日)
営 業 11 : 00 〜 19 : 00 月曜定休
会 場 ハンドワークデザインスタジオ
主 催 ハンドワークデザインスタジオ
協 力 (株)キタニ